FANTOM5

FANTOM5は、FANTOM3および4の成果から発展したプロジェクトです。FANTOM3では、さまざまなマウス組織における遺伝子発現をCAGE法で解析し、哺乳類におけるプロモーターの全体像、とくに制御機構の組織特異性、種間普遍性、構造を明らかにしました(FANTOM3論文リスト)。FANTOM4では、THP-1細胞株をモデルに、浮遊培養された単芽球細胞が接着性の単球細胞へ分化する様子を解析しました。このプロジェクトでは、転写因子の相互作用ネットワークモデルを構築し、細胞分化状態の維持と分化過程の制御においてキーとなる重要な因子を推定することに成功しました(FANTOM4論文リスト)。

FANTOM5では、これらの研究成果を発展させ、様々な種類の細胞について、プロモーターのマッピングと転写因子制御ネットワークを解析することを目指しています。現在、ヒトの主要な組織、200種以上の癌細胞、30コースの細胞分化経時解析用サンプル、マウス発生の経時解析用サンプル、200種以上の初代培養細胞、などから抽出したRNAについて、Heliscope1分子シーケンサーによるdeepCAGE解析を進めています。

FANTOM4

FANTOM4では、単球細胞の分化過程における転写開始点(TSS)の動的活性をdeepCAGE法で経時的に解析しました。得られた各プロモーターからの遺伝子発現レベルのデータと転写因子結合部位の推定データを使い、転写制御ネットワークモデルを構築することに成功しました(Suzuki et al. 2009)。 また、転写開始RNA(tiRNA)、レトロトランスポゾン由来の転写産物の発現、転写因子間相互作用による制御機構の関係についても報告しました。

FANTOM3

FANTOM3では、完全長cDNA技術に加え新たに開発したCAGE法を使い、従来考えられていた、ゲノムの約2%の領域しか転写されていないという常識を覆し、実際には63%以上がRNAとして転写されていることを示しました。さらに、それまでは100個程度しか知られていなかったノンコーディングRNA(ncRNA)が、2万3000個以上も存在することを明らかにし「RNA新大陸」の発見として教科書を書き換える成果となりました。また、転写産物の73%以上がセンス/アンチセンスペアとして転写されていることも発見しました。これらの研究成果は、Science 誌のRNA特集号に発表されました (Carninci et al. 2005; Katayama et al. 2005) 。

FANTOM2

60,770セットのマウス完全長cDNAの塩基配列および機能注釈を行いました。この活動は、世界で初めて哺乳類の完全長cDNAの標準化を行ったものです。成果は、2002年のNature誌、マウスゲノム特集号に発表されました(Okazaki et al. 2002)。

FANTOM1

かつてない大規模な遺伝子解析を実施するにあたり、遺伝子の機能注釈のルールや方法について取り決めを行い、遺伝子の機能注釈を効率的に行なうシステムを開発しました。研究成果は 2001 年のNature 誌に発表されました (Kawai et al. 2001) 。 この論文で発表された完全長cDNAデータは、1週間後に同じくNature誌に発表された国際ヒトゲノム計画の論文 (Lander et al. 2001) で、推定遺伝子数の検証のために使われています。